Jリーグ Division2 2005シーズン

  第32節 サガン鳥栖 1 - 2 モンテディオ山形

2005/9/21

札幌戦での勝利で一度は潰えかけた3位への道が再び開けてきたサガン鳥栖。次は再び3位との直接対決であるモンテディオ山形との戦い。勝てば最大で勝ち点差5に迫るチャンス。今期の行方を左右する試合である事は間違いなかったのだが…。宮原の移籍、新居の"不必要な"出場停止、高地の怪我、小井手の途中交代。サガン鳥栖を渦巻く運命は決して女神が微笑む方向には向いていなかった。

◆ 濱田レーダー

とある事情があってこの試合はバックスタンドにて1人で観戦。昨年まではこの場所で観戦していたのでいやに馴染みがあって非常に懐かしく、なぜか居心地がよかった(笑)

さて、せっかく1人で観戦するチャンスであったのでいつもとは違った観点で試合を見てみようと思い立ち、この試合では新戦力の濱田の動きを中心に追いかけてみた。

ということで、濱田のボールタッチ数を数えたのだがプレイの内訳を以下のように分類して集計していた。

・ 前方へのパス(成功&失敗)
・ 後方へのパス(成功&失敗)
・ その他のタッチ(ヘディングでの競り合い、パスにつながらないドリブルの失敗、シュート等々)

試合中にその場でメモをしていたので、お茶を飲んでいて見逃したり、遠い位置で重なったりしたときに判断できなかったりと完全に正確ではないことを予めご了承願いたい。

  前方へのパス 後方へのパス その他 合計
  成功 失敗 成功 失敗
前半 9 4 3 2 2 20
後半 7 7 8 0 11 33
合計 16 11 11 2 13 53

  前方へのパス 後方へのパス パス合計
  成功 失敗 成功 失敗 成功 失敗
前半 69% 31% 60% 40% 67% 33%
後半 50% 50% 100% 0% 68% 32%
合計 59% 41% 85% 15% 68% 32%

平均的にはパス成功率はチームとして50%〜70%程度。チームとしてどんなに圧倒的にボールを支配してもパス成功率は80%近くに達することは稀である。参考になるかどうかはわからないが、2004年のチャンピオンシップでのOptaデータを参考にしてみて欲しい(残念ながら個人に関するデータはないが)

ボールタッチ数は53回。みなさんの予想はどうだっただろうか。多分、意外と多く触っていると思った方が多かったのではないだろうか。鹿島の小笠原、G大阪の遠藤、広島の森崎のような要の選手で1試合に70〜80回触れば上出来ということを考えると53回という数字は決して少ない数字ではない。実は試合開始当初に筆者の目の前でチャンスメークに参加してからは前半の入りはほとんどボールに触っていない。攻撃に絡むことが出来ないでいたので濱田の動きを心配していたのだが、濱田の運動量は筆者が考えていたよりも全然多かったため、流れの中で徐々にボールが回ってきだした。常にボールの位置を意識しながらスペースをつこうとする動きがあり、そういった動きがあったからこそ試合が進むにつれてボールに絡む事が多くなる。

これがボールタッチ数にも如実に現れている。後半は前半の1.5倍ほどボールに触れているのだが、シュートやボールカット等に絡むのが非常に増えている。ドリブル&ランの機会が増えたのも後半だ。前方へのパスは相手を追う展開ということもあってか前半に比べてサイドチェンジやスルーパス等狙うパスが多くなったので50%とやや低めになった。

特筆すべき点は後半の後方へのパス。私が見た限りでは100%成功していた。特にボールを受けてサイドへ展開するパスや相手をひきつけてひとつ横のプレイヤーへ渡すパスはつなぎという点でかなり貢献していたと思う。攻撃に関してはボールを失わないというのが絶対条件としてあるが、濱田は組み立てにおいてテンポよくボールを回すというすばらしい技術を持っていると感じた。ミスがないというのは監督としても使いやすいプレイヤーであろう。実際に監督もこのように語っている。

 
 松本監督 
「濱田に関しては、ミスが少なく正確なパスを通していた。さすがJ1のプレーヤーだけのことはある。J2にはいないプレーヤーだ。随所に良いプレーを見せてくれた。合格点を与えても良い。これからが楽しみな選手だ」

 松本監督 「濱田と宮原は甲乙付け難い。ミスは宮原より少なかったし、スピードもあった。」
 

松本監督は記者会見の中で『ミスが少ない』という言葉を二度も使っている。ミスがあるというのは思わぬところでの失点に直結するし、ミスを前提として想定していない監督としてはミスを起こす選手はまったく計算できない。引き合いに出すのは非常に心苦しいのだが、この試合での小井手の怪我は彼のトラップミスが起因となっている。もちろん、相手プレイヤーのラフプレイを認めたくはないが、小井手がしっかりとトラップをしていたら…と思うと残念でしょうがない。

※ 図は『SKY PerfecTV! (2005/32節 サガン鳥栖 VS モンテディオ山形)』より引用

筆者は前半23分にコーナーキックのこぼれだまをペナルティエリアとセンターサークルの中間くらいで拾ったシーンで濱田のキープ力を感じた。スペースを見つけてドリブルを開始し、2人に囲まれてもボールを奪われずクロスをあげてコーナーを取った。このコーナーキックからビジュの同点ゴールを生む。ボールを失わないプレーというのはチームにも安心感が生まれる。ボールが自然と濱田に集まりだすのは時間の問題かもしれない。

比較する事自体がナンセンスなのだが、決して宮原ほどは目だったパスは多くはないかもしれない。それでも71分の浮き玉のパスのように決定的なパスも出せる。そもそも宮原と濱田はプレースタイルも違えば、ポジショニングも異なる。チームとしてどちらが必要かという問いかけがあれば濱田がお膳立てをして、最後の仕事は宮原が行うという答えを筆者は出したい。双方の力が組み合わさるパターンが一番チームとして機能するであろう。残念ながら双方がチームに存在することは今年はありえないのでドリブラーとしても力のある義希や最近展開力をつけてボランチとしての力を挙げてきた矢野とのコンビネーションをあわせて鳥栖の攻撃を活性化して欲しい。

守備に関してはさぼりもなく、かといって目覚しいカバーリングがあったわけではないが相手のボランチである大塚が上がってきたときのカバーは気にしていた模様で、可もなく不可もなくこなしていたと思う。

最後に。ひとつ気になったのは村主から濱田へのボールが少なかったこと。村主でボールが停滞することが時折見られた。監督も練習中に注意を出したりしてこの事を懸念していたのだが玉離れが悪い事が攻撃のテンポを遅らせることがある。彼は決してドリブラーではなく、濱田と同じく展開力と運動量で力を発揮するタイプなので2人のパス交換が多く見られたらもっともっとチャンスが生まれるはずだ。次節はそういった動きを期待したい。

◆ 3バックへの対応

山形が後半の終了間際から小林を入れて3バックにしてウイングバックを下げてサイドのスペースを消そうと鳥栖に対応。しかし、フォーメーションを変更してすぐの状態で慣れていないときに鳥栖の惜しい攻撃が見られた。

※ 図は『SKY PerfecTV! (2005/32節 サガン鳥栖 VS モンテディオ山形)』より引用

ゴールキックを濱田が拾う。その瞬間、左サイドにいた長谷川がスペースをつこうとダッシュ。義希も濱田の動きを感じてか右サイドのスペースをついてダッシュを行う。鳥栖のツートップを意識して中央によるセンターバックを尻目に、ウイングバックの位置が高いのを見越してサイドの開いたスペースへ自然とダッシュを行う長谷川と義希の2人。そしてそこに気づいていち早くボールを展開しようとする濱田。このパスこそ通って欲しかった。サイドのスペースをついた非常に分かりやすいほぼ教科書通りと言ってもよいくらいの3バックへの攻め方。残念なシーンのひとつであった。

◆ 試合総括

守備に関してはある程度はコンパクトにやれたのではないか。前半はプレスが前からかかっていてボールをアグレッシブに奪いに行く姿を見せていたのだが、これが後半にばてる要因になったと思う。プレスも重要だが、すべてのボールに飛びついていくと体力を奪う要因ともなりえる。この辺の兼ね合いが非常に難しいところだ。

2点目は完全に加藤が林にやられてしまった。マークをはずしたわけではなくマークについていながら体の入れ方によって前をとられヘディングによる失点。こればかりは戦術面ではどうしようもない。加藤にはより一層の精進を願う。

下司は非常に悔しかっただろう。新居と比べて前線に起点をつくれなかったのはやむをえない。そもそもそういったプレーは彼の得意とするべきところではない。キープは鈴木師匠にまかせてもっともっと彼の得意であるドリブルや前線への飛び出しで勝負して欲しかった。練習試合で見せるオフサイドに何度かかろうとも愚直なほどのまっすぐな攻め。そういった姿勢を出していけば山形のディフェンスラインを下げる効果もでてきただろうし、一本が通ればチャンスにもなったであろう。彼の持ち味は半分しか出せなかったのではないか。

あと、今日こそ両サイドバックの負傷が大きく響いた試合はなかったのではないだろうか。いままではごまかしきれていたかもしれないが、井手口と飯尾のパスミスが何度となくため息を誘ったことか。勝ち越し、もしくは同点の状態であったら守備のスペシャリストである彼らのサイドは安心してまかせていられるが、攻めへ転じないといけないときは非常につらい。高地、奈良崎、小井手のようなかかんなドリブル突破による攻めは求めないのでせめてクロスやパスの精度だけでも上げてくれれば。特に飯尾は窮屈になって前に出すロングボールがことごとくミスとなっていた。簡単にセンターバックに返して逆サイドへ展開してもよかったのではと感じたが。

監督は次の水戸戦までが我慢。第4クールになって怪我人が帰ってきてからが最後の勝負と言っている。その言葉を信じたいがまずは次の水戸戦はしっかりと勝たなければいけないだろう。これを落とすようでは怪我人が帰ってきたところで勝ち点のペースアップを望むことはできないのではないか。何はともあれ勝ち点3。それをみやげに佐賀陸上競技場での試合に臨みたい。